近年よく耳にする、「グローバル化」というワード。様々な業界でグローバル化の重要性が指摘される中、アパレル業界においてはどのような動きが見られるのでしょうか?また、日本のアパレル企業は、世界でどのような展開をしているのか気になりますよね。
今回は、アパレル業界のグローバル化について解説します。
グローバル化とは、人やお金、モノや文化などが国を越えて結びつくことで、世界が一体化することを意味します。グローバリゼーションとも言われます。
企業にとってグローバル化が進むことは、大きなメリットがあります。事業活動の範囲を国内のみならず、海外にも拡大できることでさらなる利益を生むことができたり、生産過程においてもコストカットを実現することができます。また、海外の企業と連携して新たなビジネスを生み出すことにもつながります。
日本の企業のグローバル化の代表的な例は、トヨタやホンダといった自動車メーカーですが、アパレル業界でもグローバル化は進んでいます。
自国で生産から販売までの過程を行なっている企業は少なく、多くのアパレル企業は東南アジアの工場に生産拠点を移すケースが増えてきています。
日本のみならず、海外に店舗を構えて利益を生み出しているアパレル企業は、グローバル化に成功した例といえるでしょう。
日本特有のきめ細やかなサービスや品質の良さが評価されて、徐々に認知度が拡大していき、海外の利益が国内を上回る企業もあります。ただ、ビジネスモデルや企業理念が浸透しない国では、赤字が続いたり撤退を余儀なくされることもあるため、海外進出はどのアパレル企業でも成功できるというわけではありません。
入念なリサーチとニーズを正しく把握することが、世界中でシェアを拡大させる秘訣といえるでしょう。
若い世代を中心に人気のZARAは、スペインのアパレルブランドです。売上は、ユニクロやH&Mをおさえて首位を獲得し、世界的に認知度の高いグローバルブランドとしての地位を確立しています。
現在は88の国で約6,700店舗を展開しており、アパレル以外にもインテリアや雑貨などにも事業を広げ、デザイン性の高さとリーズナブルな価格帯の商品が、多くの顧客から支持されています。
ZARAは週に2回新作が入荷します。短いサイクルで新商品を入荷することで、顧客を飽きさせず、さらに来店頻度を上げることにも成功しています。また、顧客の意見が反映されるオペレーションシステムを導入していることも、スピード感のある企画販売を実現することにつながっています。
スウェーデンを拠点に世界各国に店舗を構える、H&Mはグローバルブランドとしてもトップクラスの売上を誇ります。世界に5,000以上の店舗を展開し、日本には2008年に銀座店がオープンし、日本全国のショッピングセンターや路面店で展開しています。
近年は有名デザイナーやアーティストとのコラボや、環境に配慮した素材を使用したり古着の回収を行うなど、サスティナブルへの取り組みも積極的に行なっています。
H&Mはファッショナブルな商品を低価格で販売しており、女性のみならず男性やファミリーにも支持される、SPAの代表的なアパレルブランドといえるでしょう。
Gapは、1969年にアメリカで誕生したアパレルブランドです。Gapといえば、デニムやロゴの入ったパーカーというイメージが定着しており、トレンドに左右されないカジュアルなデザインの商品を中心に展開しています。店舗数は世界各国に約3,400店舗を構え、日本には128店舗を展開し、アウトレットモールにも出店しています。
GapはSPAのビジネスモデルを生み出したアパレルブランドで、企画、生産、販売までを自社で一貫して行うことにより、顧客ニーズに迅速に対応でき、コストカットの実現やリーズナブルな価格設定に成功しました。後のSPA企業は、Gapのビジネスモデルに影響を受け、現在のアパレル業界を牽引する存在になっています。
ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングは、2006年頃から本格的に海外進出を始め、現在も海外での事業に積極的に取り組んでいます。その結果、国内外問わず、多くの国の幅広い層に支持される企業へと成長を遂げ、「世界のユニクロ」と呼ばれるほどの地位を確立することに成功しました。
2023年5月の時点では、国内のユニクロの店舗数が807店舗なのに対し、海外のユニクロの店舗数は1,633店舗で、その中でも中国では929店舗を展開しています。海外での需要が高いことが把握できる上に、グローバル化へ積極的に取り組んでいることがわかるでしょう。
デザイナーの山本耀司が手がけるモードブランドです。1981年にパリコレデビューをし、黒を基調としたデザインの服は世界に衝撃を与え、日本人デザイナーとして確固たる地位を確立し、現在も独自の世界観で人々を魅了し続けています。
当時では珍しかったビッグシルエットの服や、ジェンダーにとらわれない服は、まさにヨウジヤマモトのコンセプトであり、ブランドの真髄といえるでしょう。
マメクロゴウチは、イッセイミヤケでデザイナーをしていた黒河内麻衣子が2010年に設立したブランドです。伝統と自然、職人技術と最新のテクノロジーを融合させた、繊細でありながらも力強さを感じるデザインが特徴的。細部にまでこだわった刺繍やカッティングが、魅力です。
女性デザイナーということもあり、女性が共感するコンセプトをベースに服作りを行なっているため、国内外問わず、多くのファンに愛されているブランドとしても知られています。
2020年の春夏はパリコレでトップバッターをつとめ、最近では、ユニクロとのコラボ商品を発表して話題になりました。
アパレル業界はグローバル化が進んでいますが、グローバル化が進むにつれ、自国の産業が衰退したり、激しい価格競争が巻き起こることにより、環境への負荷がかかるといったデメリットも懸念されています。
グローバル化は消費者である私たちにとっては、「海外のおしゃれな服を着ることができる」「日本のブランドが世界に知れ渡って誇らしい」という感覚になりますが、様々な課題やメリットとデメリットがあることを知っておく必要があります。
また、グローバル化に向けて、企業としての取り組みのみならず、個人でも海外への意識を高くもつことも重要になるでしょう。