安くてトレンドの服が手に入るファストファッション。ファストファッションは、若い女性を中心に大人気ですよね。そんなファストファッションの歴史や現状について、考えてみたことはありますか?アパレル業界で働く人やこれから目指す人は、ファストファッションの歴史や様々な問題についても知っておく必要があります。
今回は、ファストファッション業界について解説します。
ファストファッションとは、流行を取り入れたアパレル商品を大量生産することにより、リーズナブルな価格帯で販売を実現するアパレル業態のことです。短期間で大量のトレンドアイテムを生み出して世界中で売りさばき、また新たな商品を販売するのが特徴で、流行の移り変わりが早いアパレル業界にマッチしたビジネスモデルといえます。
多くのファストファッションブランドは、企画・生産・販売までの一連の流れを、全て自社で行っていることも特徴の一つです。
日本発のファストファッションブランドであるユニクロ。高品質・低価格のカジュアルブランドで、幅広い層に支持されているファストファッションブランドです。ユニクロでは「あらゆる人の生活を、より豊かにする服」を「LifeWear」とし、「究極の普段着」をコンセプトとして掲げています。
さらに、品質や安全基準の徹底やサステナブルにも積極的に取り組んでおり、シンプルで上質な商品を展開しています。
ユニクロは、フリースをきっかけに認知度が拡大し、エアリズム、ヒートテック、ブラトップなど数々のヒット商品を生み出してきました。
また、ハイブランドや有名デザイナーとのコラボ商品の販売にも力を入れています。ラコステやエルメスなどのアーティスティックディレクターの経験がある、クリストフ・ルメールによるコレクション「Uniqlo U」は、新作が発表されるとたちまち話題になるなど、様々なコレクションを展開し、上質なワードローブの追求にも力を入れています。
ユニクロを展開するファーストリテイリンググループのGUは、ユニクロよりも低価格でファッショナブルな商品が特徴のファストファッションブランドです。「もっと自由に」をコンセプトに掲げ、自由におしゃれを楽しむために、リーズナブルな価格でトレンドアイテムを販売しています。
洋服以外にも、靴やバッグ、アクセサリーなどのファッション小物も充実しており、そのほかにも下着やルームウェア、スポーツウェアなども展開しているため、それぞれのライフスタイルに合ったアイテムを選べることから、若い世代を中心に支持を集めています。
Gapはアメリカのサンフランシスコで誕生した、ファストファッションブランドです。日本に上陸した海外のファストファッションブランドの、先駆け的な存在として認知度が高く、今もなお多くの人から支持されています。
Gapといえば、ブランドロゴが大きく入ったパーカーや、代名詞ともいえるデニムなど、カジュアルで日常使いしやすいアイテムが特徴です。
近年は、アウトレットモールに出店することで、若いカップルやファミリーを中心にニーズを獲得しており、ファストファッションブランドとしての安定した地位を確立しています。
H&Mは、スウェーデン発のファストファッションブランドで、日本では2008年の銀座店のオープンを皮切りに、全国の路面店や商業施設に出店され、若者を中心に支持を集めています。
商品のラインナップは、トレンドアイテムからビジネスシーンで使えるアイテムなど、幅広いジャンルの洋服が取り揃えられています。また、キッズやメンズのアイテムも豊富です。トレンドのおしゃれな服が安く購入できるため、ファッション感度の高い人からも注目されています。
ZARAは、スペインのファストファッションブランドです。日本には、1998年に渋谷にオープンし、デザイン性の高さとリーズナブルな価格帯が注目され、女性を中心に人気のファストファッションブランドへと進化し続けています。
海外ブランドならではの、個性的なデザインや奇抜なカラーが他のブランドとは一線を画しており、また商品の回転の早さも特徴的です。ベーシックなアイテムや小物も充実しており、「ZARA HOME」ではインテリアや雑貨などのライフスタイルアイテムも展開しています。
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SHEINは、中国発のファストファッションで、従来の店舗による販売ではなく、ECによる販売が特徴。中国発ですが、アメリカのZ世代がターゲットで、日本でも若者を中心に人気を集めているグローバルファストファッションサイトです。
ファストファッションの新たなビジネスモデルとして注目されているSHEINは、商品の豊富さと驚異的な安さが魅力。アパレルに限らない商品展開は、多くの若い女性から支持されており、オンラインで購入できる手軽さも、現代のニーズにマッチしています。
2022年には、東京の原宿に世界初の常設店舗ができ、「ショールーム」と呼ばれる販売方法をとっています。店舗では商品を手にとって質感やサイズをチェックし、購入はQRコードをスマホで読み取ってオンライン上で行う仕組みです。ショールームにはフォトスポットもあり、SNSを利用した拡散力による宣伝効果も期待されています。
国内外の日本におけるファストファッションの歴史は、約40年前から築かれています。特に海外のファストファッションブランドが日本に上陸した時は、連日店舗に大行列ができるほど人気を博し、日本のアパレル業界を揺るがす存在になりました。
ただ、ファストファッションは流行の波が大きく、業績がふるわずに日本から撤退をしたブランドも数多くあります。H&Mと並んで人気があった「FOREVER21」は、2019年に撤退。しかし、現在はアダストリアの子会社が展開をし、2023年に再上陸をして日本での再スタートを始めています。
ファストファッションは、世界中で人気を獲得する一方で、様々な問題を抱えているのも事実。海外のファストファッションブランドが日本から撤退したり、し烈な競争による業績悪化など、効率重視のビジネスモデルがうまく機能しないことで、様々な問題が生じているのが現状です。
ファストファッションで問題視されているのは、「大量生産」「環境問題」「労働環境」などがあげられます。低価格で販売ができるファストファッションの仕組みは、大量生産を行なっているから。しかし、大量生産を行うと、必然的に大量廃棄をしなくてはいけなくなり、そのことから環境問題にも影響を及ぼしているのです。
現在、1日で大型トラック約130台分の衣服を毎日、焼却・埋め立てをしているといわれており、大量の衣服が処分されていることがわかります。また、個人でも年間約12枚の衣服を捨てているそうです。
安く販売するために大量生産され、消費者は安いから大量に購入をする。このファストファッションの一連の流れが、環境問題に多大な影響を及ぼしているという事実を、受け止める必要があるでしょう。
また、衣服を作るためには大量の水や、CO2を排出しています。水質汚染や大気汚染、化学繊維を使用する上での環境負荷も、大きな課題として真剣に考えなくてはいけません。
ファストファッションでは、劣悪な労働環境が問題視されています。大量生産を行なっている背景には、安い賃金で労働を強いられている現状があります。
低賃金で長時間労働をさせられている人の多くは、アジア圏の発展途上国がほとんど。過去には、バングラデシュの商業ビル「ラナ・プラザ」が倒壊し、その中に入っていた縫製工場で働く多くの人たちが犠牲になった、ファッション史上最悪の事故が発生しました。これは、安全基準のチェックをおろそかにしていたことや、労働環境の見直しをしなかったことが原因といわれています。
このように、利益追求のために搾取される人たちがいるのは、あってはならないことです。
近年は、ファストファッションが及ぼす様々な問題点を受け止め、環境問題に配慮した取り組みや労働環境の改善が行われています。
その代表例が、サステナブルへの取り組みです。リサイクル素材を使用した衣服や、古着の回収・リサイクルを行なっていたり、H&Mは、2030年までに100%リサイクル製品、またはその他の持続可能な原料を使用することを目標に掲げています。
ファストファッションは、消費者にとって安くトレンドの服を手に入れることができるため、なくてはならない存在ですよね。ただ、その背景には様々な問題があるということを、しっかり理解しておく必要があるでしょう。
アパレル業界で働く人は、アパレルの歴史や現状についての正しい知識を知っておくことで、働き方も変わってくると思います。ファストファッションが抱える問題をしっかり受け止めて、どのようなことができるかを考えてみましょう。